レボドパ
レボドパまたはL-ドパは1967年に登場して以来現在に至るまで最も効果の高いパーキンソン病治療薬です。レボドパは脳の黒質にある神経細胞に取り込まれ、そこでドパミンに変換されます。ドパミンは軸策と呼ばれる神経突起を通って脳の線状体へ運ばれてそこで分泌されます。分泌されたドパミンはドパミン受容体に結合し作用を発揮します。
最初のうちレボドパは非常によく効くので、飲み忘れない限り、パーキンソン病はもう無くなってしまったと錯覚するかもしれません。レボドパは極めて効果の高い薬ですが、副作用もあります。最も問題となるのは吐き気ですが、レボドパに脱炭酸酵素阻害剤を合わせた合剤を使用することにより吐き気を減らすことができます。また、多い錠数で治療を続けた場合には症状の日内変動(ウエアリング・オフ現象=薬の効果切れ現象)やジスキネジア(無意識のうちに手足や身体が踊るように動く現象)という副作用が現れてきます。一旦ウエアリング・オフ現象が現れると、レボドパ1錠の効いている時間が少しずつ短くなってゆくのがわかります。これに対してはCOMT阻害薬という薬を追加するとレボドパの効果時間を延長することができますが、残念ながら日本でまだ市販されていません。COMT阻害薬より効果は弱いようですがMAO-B阻害薬(エフピー)にもレボドパの効果時間を延長させてウエアリング・オフ現象を改善させる効果があります。
ドパミンアゴニスト
ドパミンアゴニストと呼ばれる薬で治療を開始してレボドパの投与開始を遅らせることにより、ウエアリング・オフ現象やジスキネジアの発現を遅らせることができます。久米クリニックでは治療をドパミンアゴニストで開始するか、あるいはレボドパで開始するかは患者さんとよく話し合ってから決めることにしています。たとえレボドパで治療を開始したとしても将来ドパミンアゴニストを追加することはできますし、反対にドパミンアゴニストで治療を開始して後から必要に応じてレボドパを追加することもできます。最終的にはほとんどの患者さんでレボドパとドパミンアゴニストの両方が必要になってきます。ドパミンアゴニストは使いやすく、レボドパと同様にパーキンソン症状に対して効果的です。さらに、レボドパには無い病気の進行を抑える作用を持つ可能性があります。
セレジリン
セレジリン(エフピー)はMAO-Bと呼ばれる特殊な酵素の働きを阻害する薬剤です。それ自体のパーキンソン症状改善効果は小さいけれど、レボドパと併用することによりレボドパの効果時間を延長させることができます。
アマンタジン
アマンタジン(シンメトレル)は米国において当初A型インフルエンザの予防薬として開発されました。1967年にあるパーキンソン病患者さんがインフルエンザの予防のためにアマンタジンを服用したところパーキンソン症状が改善し、アマンタジンの抗パーキンソン病効果が見つかりました。アマンタジンはドパミン神経細胞に作用してドパミンを放出させ、さらに脳内でドパミンに対抗するアセチルコリンの産生を妨げて効果を発揮しています。アマンタジンは約半数の患者さんに効果が見られますが、その半数以上では1年以内に効果が減弱してきます。また、最近アマンタジンにはレボドパ治療の副作用であるジスキネジアを改善する効果があることがわかってきました。一方、アマンタジンには下肢の皮膚が変色したりやむくんだりする副作用がまれにみられます。また、高齢の患者さんでは抗アセチルコリン効果により幻覚が現れたり、記憶力が低下することがあります。
抗コリン剤
レボドパが登場する以前のパーキンソン病治療の主役は抗コリン剤と呼ばれる一群の薬でした。これらの薬は体内で産生され様々な臓器を調整しているアセチルコリンに対抗する作用を持つので抗コリン剤と呼ばれています。一般に、抗コリン剤と呼ばれる薬はアセチルコリンが働く全ての臓器に対して何らかの作用を及ぼしますが、多くの抗コリン剤は特定の臓器に対して他の臓器よりも強く作用する傾向があります。例えば、アトロピンという抗コリン剤は心臓に作用して心拍数を減らします。また、プロピベリン(バップフォー)という抗コリン剤は膀胱の過剰な収縮を抑えるので頻尿の治療に用います。そして、アーテンやビペリデン(アキネトン)がパーキンソン病の治療に使われます。アーテンとビペリデンは特に振戦と固縮に効果があります。抗コリン剤は口渇、便秘、尿閉、錯乱、幻覚などの副作用が現れることがあるので高齢者では注意する必要があります。 |